前回、海外と比べた日本の労働慣行の異常さと、現在の「働き方改革」の問題点についてコメントしました（「ズレているニッポンの「働き方改革」）。
今回は定年制と年金制度改革についてコメントします。
かつて日本企業の定年は55歳でしたが、現在では60歳定年としている企業が多数ではないかと思います。
一方で、財源枯渇が懸念される年金を守る観点から年金支給年齢が65歳へと徐々に繰り下げられつつあり（60歳からの受給も選択できるとはいえ）60歳の定年から65歳の年金受給までの５年間、無休状態になるリスクが存在してしまいます。
この事態を回避すべく政府は65歳まで再雇用することを企業に義務付けましたが、この制度によって何が起こったかというと、60歳で定年になった後は（企業にもよりますが）新入社員並の給与で再雇用されることになります。
然しこれでは、大幅な処遇カットでモチベーションを落とした高齢労働者が会社に居残るだけという、会社全体の雰囲気を悪くする事態を招く結果となります。
どうしてこんなことになってしまったのか。
最大の理由は、日本の終身雇用・年功序列の制度にあります。
徐々に崩壊しつつあるとはいえ、日本ではその職務内容にかかわらず徐々に給与がアップし中高年になると（少なくともポストオフ（役職定年）になるまでは）相応の給与を貰えます。しかしここで職務内容と給与のミスマッチ起こってしまうので、そのギャップを60歳の再雇用時に一気に解消しようとする結果、高齢者の給与が新入社員並ということになってしまうのです。
従って本来は給与を職務に見合うように徐々に改革していくしかありません。
ただし、私自身、60歳定年の前の役職定年が目の前に迫りつつある年齢で、年功序列的な給与の恩恵を受けていたと言えますが、若い頃は明らかに給与に見合わない労働を会社に提供し、その足らず米を中年になってから返して貰っている、という部分もあると感じています。
年功序列から成果給にシフトする過程では、間に挟まった私のような世代は、若い頃は薄給でこき使われたのに、中高年になってもその分を取り返せない、そういう割を食ってしまうようです。
もう少し中高年に優しい「働き方改革」であると有難いのですが。。。