リニア中央新幹線の工事を巡り、事業者であるJR東海と、計画ルートにある静岡県知事が激しく対立しています。
そもそもリニア中央新幹線とはどんなものか調べてみました。
【リニア中央新幹線とは】
・新幹線初の超電導磁気浮上式リニアモーターカー(超電導リニア)を採用する路線
・2011年5月に整備計画が決定され、2027年に東京ー名古屋間を先行開業
・2037年には全線開通し、東京ー大阪間を最短67分で結ぶ予定
これに対し、静岡県知事が反対を表面していますが、その理由は、「静岡工区を大井川が流れており、トンネルの湧水が大井川の流域外に流れ出すなどして川の流量が減少したり、下流で地下水位が下がったり、水質が悪化したりする」ことを懸念しているため、としています。
一方で静岡県は、リニアは静岡を素通りするだけ(静岡工区は山梨県と長野県に挟まれた南アルプストンネルの一部8・9キロのみ)で、経済メリットが無いことも挙げていますので、本音のところはリニアを通す許可に何らかの経済的な見返りを求めているのかもしれません。
然しそもそも、今の日本にリニア新幹線は本当に必要なのでしょうか。
一つの実例があります。世界初、として現時点でも唯一の商業運航をしているリニア高速鉄道「上海トランスラピッド」、通称上海リニアです。
筆者も上海勤務時に何度も乗りましたが、乗ったと思ったらもう到着してしまう、窓の外が飛行機並みに飛び去って行く迫力に圧倒されました。
然し当初予定していた上海のもう一つの国際空港である虹橋空港と結ぶ計画もとん挫して乗客数が伸び悩む中、乗る人は観光客で、移動手段ではなく乗ること自体を目的としたアトラクションリニアだと揶揄されてきました。
更にコロナ禍で収支は非常に厳しく、巨額の開発費も維持費も回収できないと報じられています。
翻って日本のリニア中央新幹線を改めてみてみると、多くの疑問が浮かびます。
まず、ニューノーマル下では人の移動は従来のようにはならず、リモートで済ませられる出張は大幅に減ることが予想されます。
高速列車で短時間で東京⇔大阪を移動したいというニーズが今後どれだけあるでしょうか。
また巨額の開発費を考えれば、乗車賃も相当高額になる筈で、飛行機・既存の新幹線と対抗できる値段設定に出来るとは到底思えません。
コロナ前から社会全体として「速く移動」から「ゆったり移動」にシフトしつつあった中、リニア中央新幹線を開通させなければならない理由は、実はもう殆どないのではと感じます。
唯一あるとすれば、リニア技術を高めることでしょうが、今後、そのリニア技術を他に使える可能性はあるのでしょうか。