書評『大地の咆哮 元上海総領事が見た中国』(杉本信行、PHP研究所、2006年)

この本は、元上海総領事がその外交官としての中国との関わりの中で捉えた中国の真実、日中間の問題点、そしてその改善策について、その自らの命が癌で尽きることをご存知だったからこそ書き得たであろう、非常に率直な内容の一書です。

中国ビジネスに携わったことのある方であれば、非常に素直に「まさにその通りだ」「なるほど、あの話はそういう経緯だったのか」と納得感を得られるかと思いますので、何らかの形で中国ビジネスに関わっている方々には是非とも読んで欲しいと思います。

この本には、中国勤務者が日常ビジネスにおいて、ごく普通に味わっている苦悩がリアルに詰まっています。

中国ビジネスでは、日本からみれば「そんなこと、ある訳ないじゃないか」ということが当たり前のように連発しますが、中国勤務者からの説明では本社はなかなか納得しないというのは、中国勤務者であれば誰しも一度や二度ならず経験したことがあるかと思います。

この本は、そうした中国勤務以外の、中国ビジネスに関与している方々に、外交官、総領事という立場だった方からの意見として正面から受け止めて欲しい内容だと思います。

「そんなこと有り得ない」ことが、当たり前にあるのだということを、総領事として、外交官として語ってくれていることが、中国勤務者にとって最大の支援になります。