庶民派で世襲では無い菅総理には一定の期待をしている一方で、安倍前総理時代、官僚による官邸忖度を産んだ官僚人事への過剰な介入は菅前官房長官がその本丸だったとも言われており、権力を使った強硬な姿勢は懸念材料だと思っていました。
日本学術会議の会員任命について、一部の学者の任命を総理の指示で見送ったとの報道に触れ、早速に懸念していたことが表面化したかと感じました。
日本学術会議とは、「科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立」(同会議ホームページより引用)された組織です。
内閣総理大臣の下にある機関ですので、そのメンバーは総理が任命することになっており、慣例では学術会議から推薦された学者をそのまま任命していたものの、今回は105名の新会員候補のうち6名が任命見送りとなったとのこと。
任命権が総理にあるのだから、当然に任命しない権利も総理にある、というのが官邸の説明です。
一見理が通っているようにも見えますが、任命しないのであれば、流石にその理由を説明する責任はあると私は思います。
率直に言って、官邸にはどの学者がどのくらいの実力の持ち主で、この会議のメンバーに相応しいか否かを見極める能力は無いと思います。だからこそ従来は推薦された人を全て任命してきた訳です。
勿論、会議が推薦した人の中に、明らかに不適格な人が居たのであれば任命をしないという選択があることは否定しませんが、見送られた方のお名前と肩書きを拝見する限り、皆さん名の通った超一流大学の教授ですから、この方々が学者として不適格だとは到底思えません。
では何故任命されなかったのかと言えば、一部で報道されているように、過去の政府主導法案に否定的な見解の学者だったから、なのでしょう。それ以外の理由は見当たりません。
然しこれはとても恐ろしいことです。
官邸の気に入らない人はどんどん排除していけば、行き着く先はお隣、北朝鮮のような国になるでしょう。
菅総理は、ご本人も気づかぬうちに、その方向への第一歩を踏み出してしまったように思われます。
菅総理は官房長官時代から、質問には正面から答えない、回答をはぐらかすことで安倍前総理を庇ってきましたが、ご自身が総理になられたのですから、少なくとも説明責任からは逃げることのないようお願いしたいと思います。
独裁者への道を突き進みたくないのであれば、ですが。