ヨーロッパや一部の国では、ワクチン接種が完了した人に「ワクチンパスポート」を発給し、海外との往来時の隔離措置を免除する動きが始まっています。
日本でも経済団体からの強い要請を受け、7月下旬よりワクチンパスポートの発行が開始されることとなりました。
日本国内では「ワクチン非接種者への差別に繋がる」として反対の声も根強いですが、海外渡航に限っての利用であればメリットこそあれデメリットはゼロですから、政府の方針には全面賛成です。
然し実務面では改善されるべき事項が何点か残っています。
1点目はデジタル化です。
海外ではコロナ陰性証明やワクチンパスポートをデジタル化してスマホの画面を提するのみなのが主流ですが、IT後進国の我が国では当面は紙の発行となっており、デジタル化がいつから対応させるのか未定です。
2点目は我が国自身の方針です。
ワクチンパスポートを持って下海外に渡航し、その国入国時には隔離が免除されても、現時点では日本帰国時の隔離は免除されません。これでは海外出張も海外旅行も簡単には行けません。
ワクチンパスポート保有者に入国時隔離を免除することは日本国内の反対が根強いと思われますが、我が国も世界基準に合わせてリスクとリターンのバランスを取っていく必要があるかと思います。
3点目は相互主義です。
この手の外交施策はお互いのルールを認め合うのが基本です。然し現状は、先進国は欧米ワクチン、中国と途上国は中国ワクチン、に大きく分かれており、我が国を含む多くの国では中国ワクチンを承認していません。
然し中国では現状は中国ワクチンを打った人にのみワクチンパスポートが与えられており、逆に日本では中国ワクチンは未承認につきパスポート対象にはなりません。
このままですと、中国に渡航する際、中国ワクチンを打った人は日本では隔離対象ですが中国では対象外、逆に欧米ワクチンを打った人は中国では隔離対象ですが日本では対象外、となる懸念があります。
ワクチンパスポートの実効性を高めるには国家間の交渉によるルールの共通化が不可欠であり、日本政府のリーダーシップを期待します。