米国と中国の狭間で。

米バイデン大統領就任後、外国首脳と初のリアル会談となった日米首脳会談が終わり、日米共同声明が発表されました。

後手に回るコロナ対策や相次ぐ与党議員の不祥事などもあり支持率の低迷する菅総理にとって、外交的成果は支持率回復の重要な一手であり、バイデン大統領としては初のリアル会談を実現出来たことをのみを以ってしても、政府与党は大きな外交的成果であると喧伝するでしょう。然し、発表された共同声明を見ると、かなり米国側の主張に押し切られた感は否めません。

そもそも何故にバイデン政権が初の会談相手を日本としたのか、と言えば、日本それ自体というよりは、対中戦略の一環として「中国と経済的な繋がりが強くて地理的にも近い同盟国である」日本を早期に自国陣営に引き摺り込み、対中戦略の一つのコマとして確立させること、にあったのは明らかです。

民主主義や人権・人種差別問題を最重要政策の一つと掲げているバイデン大統領とすれば、香港やウイグル人権問題、自由で開かれはインド太平洋などは絶対に譲れない一方で、中国を名指しにそれを文書化すれば、人権や民主主義よりも対中ビジネスを重んじる日本国政府は難しい立場に立たされることになります。

今回の共同声明ではかなりアメリカ側の意向が汲み取られ、中国にとっては耳障りの宜しくない内容となっています。実際、早速に中国は反発するコメントを発しています。

過去の事例、具体的には尖閣問題発生時のフジタ社員の拘束や、韓国へのTHAAD配備時における中国展開するロッテマートへの嫌がらせといった、民間企業や民間人への報復措置が強く懸念されるところです。

にも関わらず、日本企業には危機感が薄いと言わざるを得ません。日本は好むと好まざるとに関わらず、米中戦争が勃発すれば米国側に立って戦わざるを得なくなります。事態がそこまでには至らずとも、中国とのサプライチェーンはズタズタになるでしょう。

これからの日本はとても難しい舵取りを迫られることになるのは間違いありません。