ブログ100本目記念 参院選を占う

2019年2月から書き始めたこのブログも100本目。

100本目に相応しいネタは何だろう、と考えましたが、矢張りここはこのブログの王道(?)である政治の大イベント、参議院議員選挙を取り上げます。

その前に、日本の国政について基本知識のおさらいをします。

近代国家の柱となる「三権分立」。「三権」とは「司法」「行政」「立法」の3つで、近世以前の国家ではこの「三権」を一人の人物・一つの組織が独占することで何でも出来てしまっていました。その結果として時に権力の暴走を許したことから、「三権」を分離させ、独立させることで国民を守る、という概念です。

わが国では、司法は裁判所、行政は内閣、立法は国会、がその機能を担っています。ちょっと意外なイメージを持たれる人もおられるかもしれませんが、国会の機能は立法、即ち「法を作ること」であって、地元に橋を作ったり、地元に鉄道を引っ張ってきたりすることではありません(笑)。

日本国憲法には「国会は国権の最高機関」とされています。これは、国の主権者である国民が直接的にメンバーを選ぶことが出来る唯一の機関が国会であるから、です。つまり「三権分立」という国民を守る最も重要な仕組みの「肝」となっている機関が、国政選挙で私たちの代表者を選ぶ衆議院議員選挙と参議院議員選挙、ということになります。そう考えると、絶対に棄権なんて出来ないですよね。

参考まで、お隣の中華人民共和国では「三権分立」を導入していません。理由は至極簡単で、共産党が全ての頂点に立つ国家政治体制だからです。従って、例えば日本では国会が定めた法律であっても最高裁判所が違憲とすることが(滅多にありませんが)出来ますが、中国では全人代が定めた法律を人民訪印が違反だと判断することは出来ません。

さて、日本の立法権である国会は「二院制」(若しくは「両院制」とも)という制度を採っています。「二院制」を採用する目的は、国民の多角的な意見の反映にあります。異なる方法で選ばれた夫々の代表者が、より深い議論を行うことが期待されています。また片方がもう一方をチェックしたり牽制したりする役割もあります。

日本の二院制を非常にシンプルに言えば、衆議院は4年の任期(実際には解散があるのでもっと短い場合が多い)で全員が選びなおされるため、国民の意見をタイムリーに反映することが出来ます。一方で参議院は任期6年で解散が無く、3年毎に半数ずつ入れ替えるため、中長期的な目線で国民の意見を反映させることが出来ます。これが一番の違いだと言えるでしょう。

私が小学校の頃の授業で、参議院と衆議院の違いを示す選択肢の中に「参議院はタレントが議員になる」というのがありました。確かに衆議院に比べて参議院は「タレント議員」が少なくありませんが、これは選挙区広い参議院選挙では「幅広く顔を知られている人」が当選し易いのが要因です。逆に小選挙区の衆議院選挙では、特定の地域に強い影響力を持つ「地元の有力者」が当選し易いと言えます。その意味でも選ばれる人のタイプは両院でバランスが取れていると言えるのかもしれません。

今回の参議院議員選挙最大の注目点は、やはり何といっても与野党勢力、もっとシンプルに言えば議員数がどうなるか、でしょう。

現在、衆議院は与党が圧倒的な勢力を誇っています。過半数というレベルではなく、憲法改正の国会発議に必要な三分の二をも超えている、絶対安定多数です。上の述べたように衆議院はタイムリーに国民の意見を反映するため、所謂「風が吹」けば、特定の政党が突然大躍進することがあります。今の与党は前回選挙で国民の圧倒的な支持を得たということになります。

一方で参議院は毎3年半分ずつ交代するので、そこまで急速な「風」を受けません。今回は改選議席は124議席、そのうち与党が86議席以上を取れれば「改憲勢力」(与党+日本維新)で三分の二を超え、衆参ともに憲法改正発議が出来る議員構成となります。安倍総理は改憲を今回の選挙の論点の一つに据えていますので、改憲への賛否の意思を示したいと思っている方は、「改憲勢力」に三分の二を与えるかどうか、というのが投票時の一つのチェックポイントだと言えるでしょう。

日本の場合、特定の政党を支持する「固定層」は決して多くなく、大半が選挙の都度投票先を決める「流動層」ですが、今回はその流動層がそもそも安倍総理の言う改憲を選挙のテーマとして捉えるか、どうかは私は疑問に思っています。

別のブログでも書きましたが、日本を取り巻く東アジア情勢は世界でも最も危険な地域の一つと言えるため、出来るだけ早急に改憲を行って自衛隊を国軍化すべき、と考える保守の流動層は多いでしょう。

然し一方で、この数年噴出する「長期安定政権の奢り」の表出のような事件の数々を見ると、このまま更に長期安定化させると権力が暴走して危険だと考える革新の流動層も少なくないかもしれません。

景気は長期的にゆるやかに回復している、これはアベノミクスの成果だ、と考える方もおられるでしょうし、一方で実は景気は回復などしていない、生活実感としては寧ろ悪化している、これは安倍政権の失敗だ、と考える方もおられるでしょう。

もう一つの論点は間近に迫ってきた消費増税と、長期的に膨れ上がることが確実な釈迦保障の財源です。折良く(与党にとっては折悪しく?)発生した金融庁の年金二千万円足りないぞレポートで、年金、社会保障、そしてその財源としての消費税、をどう考えるのか、が最大の関心事だとする国民も多そうです。

冒頭にも申し上げた通り、衆議院と違い参議院の存在意義は長期的な国民視点の立法権への反映です。

個々の政党や政治家が述べる当面の政策に加え、長期的目線でどの政党にどのくらいの勢力であって欲しいのか、そう考えて投票するのもまた、参議院選挙の(不謹慎ながらも)面白さだと思います。

私も残りの選挙期間、じっくりと政策を聞いて、最終的な判断をしたいと思っています。