2022年上期のNHKの朝ドラ「ちむどんどん」が炎上し捲っています。
筆者もNHKの朝ドラは結構見ている方ですが、確かにこのドラマは色々な観点から破綻していると感じます。
沖縄返還50周年の今年、沖縄が舞台のドラマということで期待していたのですが、沖縄戦や沖縄返還に纏わるエピソードは殆ど無し。
主人公の母が遺骨収集をしていたという話が数話ありましたが、そもそも母親が毎年一日不在であったのに家族は一度も行き先が聞いたことを無かったり、挙句の果ては遺骨収集の話を単なる主人公の恋愛成就のきっかけにしてしまったりと、今年沖縄を舞台にした意味は全く感じられない展開になっています。
それ以上に気になるのは時空間の歪みです。
主人公やその家族は頻繁に電話で話をしていますが、昔をご存じの方はお判りでしょうが、あの時代、長距離電話の電話料金は極めて高かったことから、滅多に長距離電話など出来ず、手紙を書くか、急ぎならば電報が一般的でした。
然しこの家族は殆ど雑談のようなレベルで沖縄と東京で電話したり、ましてや職場や下宿先の沖縄料理屋にまで長距離電話を掛けたりしているなど、電話代はどうしたのかが気になるところです。
主人公の勤務先は銀座、下宿先は鶴見、の設定ですが、これも距離感が近く、銀座で仕事を終えたらすぐに鶴見についているような気軽さで往来しています。
時間軸も、主人公が料理人として成長するエピソードなど殆ど挿入されていないにも関わらず、いつのまにかシェフとして一人前になっているかのような描写になっているなど、見ている側からするとタイムスリップ感覚に陥ります。
しかし何と言っても最低だと感じるのは、主人公とその家族の人格です。
主人公は自己中心的な人物の典型で、常に自分が正しいという発想で、勤務したばかりのレストランのオーナーにあなたは間違っていると喧嘩を売ったり、結婚相手の親に弁当を毎日強引に持ち込んで「私は間違っている?」と発言したり、挙句は主人公に恋心を寄せた幼馴染を披露宴でスピーチさせたり(これは主人公だけが悪いのではなく周囲の人々すべてが悪いですが)、人の心を全く思いやらない、問題児な筈が、何故かドラマの中では素晴らしい人であるかのように取り扱われています。
ニーニーと呼ばれる長男は、妹の婚約相手の家からお金を搾取しようとする、ボクシングジムやその他多くの人から金を借りて返さない、頻繁に詐欺ビジネスに手を染める、と立派な犯罪者ですが、8月18日の回では突然に子供時代が描かれ、近所のお店からお金を盗み、しかも父親が土下座して「今度やったら俺が刑務所に行く」「お前は悪くない」と犯罪を犯した息子を叱るどころか、意味不明な発言をする一方で、当の本人は全く悪びれた様子なし。
こんな人物をNHKが朝から流して良いのか、と思われる人間の屑ぶりです。
長女はドラマ当初は真っ当な人物に見えましたが、子供を放置して東京に突然出てきたり、教師として子供の気持ちを汲み取れないシーンが強調されたりとどんどん不思議な人物になっています。
ましてや貧しい生活の中、こつこつと溜めた旅行資金を、お金をだまし取られた妹にぱっと渡してしまうなど、長女の子供の気持ちなど全く省みない行動にも疑問だらけです。
三女は、一度もきちんと歌を習ったことなどなく、病気がちの引っ込み思案で人前で緊張するタイプにも関わらず、突然歌手になりたいと言い出し、然し公民館で習うレベル、毎回同じ歌しか歌わない、など、かなりの不思議ちゃんぶりです。
こんな兄姉妹の母親は金銭感覚がゼロで、物語序盤からなんでも人に分け与えてしまう人物という設定とはいえ、詐欺行為を働く長男に借金をしてまでお金をつぎ込むエピソードが何度も続くと、流石に人間としてどこかネジが外れているとしか思えません。
ネット上でも「ちむどんどん反省会」なるハッシュタグで批判が盛り上がっていますが、流石にNHKは天下の朝ドラでこのような破綻したドラマを反省しているかと思いきや、なんと局内で賞を与えたそうで、それにも視聴者が愕然としています。
結局、「受信料」という強制料金徴収システムが、NHKがこのような破綻した、民放であれば間違いなく途中で打ち切られるであろうドラマを平気で流し続けていられる要因になっているのであろうと感じています。
筆者はもともと過去の投稿でも書いている通りNHK解体論者ですが、今回の破綻した朝ドラをみていて、その気持ちを一層強くした次第です。