「生前退位」という表現に異議あり

2019年4月1日、新元号「令和」が発表されました。

中国嫌いの安倍政権であり、事前に日本の文献も典拠に入り得ることが公表されていましたので、恐らく漢籍は回避し日本文献から採られるであろうと思って今したが、「万葉集」とは想像していませんでした。

考えてみれば、大半の古代~中世日本文献は漢文で書かれており、内容も漢籍に拠ることが多い一方、万葉集は万葉仮名、即ち日本語(と漢字の当て字)で書かれており、純粋な日本文献ということが出来ます。まさに安倍政権らしい典拠ですが、悪くない言葉だと思います。

「令和」の典拠  万葉五・八一五右序文

(原文)于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉蘭薫珮後之香

(読み下し文)初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす

(現代語訳)時は初春の良き月、空気は美しく風も和やかで、梅は鏡前で装うように白く咲き、蘭は身に帯びた香りのように香っている

さて、本題ですが、今回は「生前退位」という表現が使われています。

然し「生前退位」という表現は全く使われなかったということではないにせよ、耳慣れない日本語であり、本来は「譲位」という日本語が自然です。実際、今上陛下御自身も「譲位」という表現を使っておられあます。

にも拘わらず何故「譲位」ではなく「生前退位」という表現を使い始めたのかといえば、「譲位」という表現が皇室典範や憲法に抵触するリスクを政府が懸念したからだといわれています。「譲位」とはその漢字の通り「位を譲る」ことであり、陛下が主体的にその位をお譲りになられる形となると、憲法の天皇の国政不関与に抵触するのではないか、ということです。

然し率直に言って単なる言葉遊びに過ぎないと私は感じます。

本来は「皇室典範」を改正することで「譲位」を合法化するべきところ、敢えてその方法を「時間がない」と回避したのは、恐らく皇室典範論議が始まれば、女性天皇や女性宮家容認の議論が起こってしまうことを安倍政権が懸念したから、ではないかと推測しています。

いずれにせよ、日本国民は本来の日本語である「譲位」を使うべきではないでしょうか。