海外で仕事をしていると、日本の労働慣行の「異様さ」が目につきます。
海外では労働契約を締結する際、契約期限や職務内容を明確にします。
契約期限が到来すれば契約を更新するかどうかが労使双方で検討され、期限到来で解雇といったことは全く珍しくありません。労働者の国である、かの中国ですら通常は有期雇用であり、労働契約法に定める一定条件を満たさない限り無期雇用にはなりません。
職務内容も、「ジョブ・ディスクリプション」にて明確に定めた上で仕事をしますので、日本のように「なんでもやる総合職」という概念はありません。日本では「なんでもやる総合職」として雇用された以上、例えば「便所掃除をせよ」と上司が命じれば基本的には従わざるを得ません(度が過ぎれば、パワハラ防止法に定めるパワハラに該当します)が、海外でそれをやったら「その仕事は私のジョブ・ディスクリプションに定められていないので、やりません」と部下から断られるでしょう。
そんな特殊な労働慣行の日本でしたが、このところ、大手企業のリストラ記事が非常に目につくようになりました。
東京商工リサーチの調査によれば、今年上半期の上場企業による人員削減は17社、早期退職募集・応募人数は計8178人とのこと。上期だけで昨年から倍増したそうです。
この中には経営再建のためのリストラではなく、業績好調にも関わらずリストラに踏み切っている大手企業も含まれています。
日本全体では人手不足が叫ばれている中、本来は従業員が必要であるにも関わらず、年功序列で高給取りになってしまったバブル期採用社員の巨大な塊は、もはや会社にとっては「厄介者」になっている、ということなのでしょう。
日本の特殊な労働慣行を見直していくこと、それ自体には全く反対しませんが、制度移行期の狭間に陥ってしまう年代、具体的には今現在の40~50歳前後のサラリーマンを社会が「見捨てる」ことになってしまうと、結果的には消費減退や社会不安に繋がることが大いに懸念されます。
こうした問題は個別企業に任せても解決しませんので、国の関与を期待したいところです。