今回の参院選について

今回の参院選を私なりに総括してみました。

1.盛り上がりの欠如

史上二番目に低い投票率となったことが示すように、今回の選挙は全体としては盛り上がりに欠けていました。

最大の理由は争点の欠如です。

自民党は改憲勢力で2/3を確保することで憲法改正に繋げたいと考えていたようですが、改憲は選挙戦で殆ど論点にならず、そもそも改憲勢力といっても与党/公明党は消極的で加憲の立場、一方で野党/国民民主党には改憲派議員が多いこともあり、実はそもそも選挙のテーマには不適切だということです。今後超党派的に議論されていき、国民の理解を深めていくことが必要なテーマだと思います。

選挙前に盛り上がった「老後資金が年金だけでは足りない問題」も、野党は政府批判のネタとしていたものの、実は国民の多くは元々年金だけで老後が暮らせるなどというお気楽なことは信じておらず、少子高齢化で社会保障コストが国家全体として厳しくなっていくことも十分知っているので、野党による与党批判は空疎に聞こえ、空振りました。

国政レベルで議論すべきテーマ以上に外交問題が複雑化していることも、内政である選挙が盛り上がらなかった一因です。複雑化する日韓対立、米中摩擦の狭間で揺れる日本。日本を取り巻く外交が非常に不安定な中では、国民は内政の大きな変化を求めなかったと言えるでしょう。

2.それでも圧倒的に強かった自民党

一人区では野党統一候補擁立が出来たこと、自民対野党という構図に持って行けたことは、選挙戦としては盛り上がる要素でした。今の野党では残念乍ら一党単独にて一人区で自民党に勝利するのは非常に難しい状況です。

結果としては一人区32議席に対して与党22勝・野党10勝。

これをどうみるかは評論家の間でも意見が分かれていますが、私は何もしなければ恐らく圧倒的に自民党勝利だったところ、統一候補で10勝まで持ってきたのは野党戦略の勝利、然し逆に言えばそこまでやっても10勝しか出来なかった(前回は野党で11議席)ということは自民党の地力が大きく勝っていた、つまり見方によって与党勝利とも野党勝利とも言えるでしょう。

但し今回の結果が示すのは、やはり野党共闘というよりも、自民党への対立軸となる、政権交代が担えると国民が思える野党が登場しない限り、全体としては自民党一強は変わらない、ということなのだと思います。

3.意外な政党の躍進

最大のサプライズは、れいわ新選組が2議席獲得したことです。

訴えていた内容は、一部評論家が指摘する通り、欧州で最近非常にみられる左派ポピュリズムです。日本でもいよいよグローバリズ自由貿易ではメリットを得られない、寧ろデメリットしか感じない「一般国民層」の、既存野党では拾い上げられなかった声を、れいわ新選組が受け皿的に獲得したものと思われます。

もう一つはNHKから国民を守る党。私自身、NHKには批判的な立場ではありますが、然し国政政党で(失礼ながら)このような名称の政党が議席を得るとは全く想像すらしていませんでした。

何故これほどの票を獲得できたのか、には未だ納得できる評論も見かけていませんが、私個人としては、既存政党のどこにも投票したくないが社会に不満がある、では、第二の権力の代表たるマスコミの親玉のNHKを批判するこの政党に入れてみよう、ということだったのではないか、と思っています。

今回の選挙は、結果としてはバランスが取れた出来上がりだと私は思います。

外交的に微妙なかじ取りが必要でもあり、何かあれば与党だけで速やかに物事を進められる過半数は確保、然し今少し国民的な議論を深める必要がある改憲は、所謂改憲勢力だけでは成し遂げられず、国民の既存政党への不満の受け皿となった政党が議席を確保、というのは、今後、色々な議論がし易い素地ではないでしょうか。